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研究内容RESEARCH&PRODUCTS

更新 2015. 6. 12

グラフェンの面内歪み制御

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「微細構造振動子を用いたグラフェンの面内歪み制御の研究」

   準備中


画像センシング

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「空間領域差分計測法による高分解能イメージング技術」

   光学測定系とピエゾ駆動ステージを結合させ、差分法による光信号の試料位置依存性のみを検出する高分解能イメージング手法を開発した。 この手法は数値演算による画像の鮮鋭化処理とは決定的に異なっており、イメージファイバ光学系や顕微鏡システムに適用したところ、 炭素原子1層の膜であるグラフェンの反射イメージ等の観測で、大幅な分解能の向上を実現した。 本手法の汎用性は高く、画像センシング分野での幅広い応用が期待される。


グラフェンの輸送特性

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「スプリットゲートを持つ二層グラフェンの量子伝導」

   バックゲート電極をもつグラフェン FET 構造の表面に、さらに局所的にトップゲート電極を付加すると(スプリットゲート構造)、 キャリア密度を両ゲート電極で制御することにより、空乏層のない p-n 接合系を生成できることが知られており、この系の磁場中電気伝導特性は、 接合界面でのエッジチャネルの mixing によって説明できるとの報告がある。 また、二層グラフェンの場合、電場によるキャリア密度の制御に加え、垂直電場によりエネルギーギャップが開くことが知られている。 そこで、スプリットゲート構造を持つ二層グラフェン FET の磁場中電気伝導特性を調べることにより、 エネルギーギャップ生成による絶縁状態と量子ホール効果との関連が明らかになるはずであるが、これまでのところ、 p-n-p 接合系における量子ホールプラトーの観測例があるのみである。 そこで今回我々は、スプリットゲートを持つ二層グラフェン FET 素子を作製し、磁場中での電気伝導特性を調べた。 その結果、充填率の変化に伴う電気抵抗の段階的な変化と、エネルギーギャップ生成による n = 0 量子ホール絶縁状態が正負両電圧側において明瞭に観測された。


 

低次元有機導体の輸送特性

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a-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4における角度依存磁気抵抗振動」

   擬2次元有機導体a-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4が低温・低圧・低磁場領域で示すいわゆる異常相では、角度依存磁気抵抗振動 (AMRO)においても、 電荷密度波(CDW)状態の発現により消失したはずの擬1次元的Fermi面に由来すると思われるLebed共鳴的振動が観測されるが、 この現象は従来の電子系の理解では説明できない。 そこで、今回、a-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4の低温相における異常なAMROが高温相での擬2次元Fermi面のKajita振動にどのように移行していくのかに注目し、 CDW転移温度近傍でのさらなる測定と、結晶構造が同型でフェルミ面形状が僅かに異なるNH4塩についても同様の比較測定をおこなった。 その結果、低温相におけるLebed共鳴的AMROに見られるダイヤモンドパターンは、残留する柱状Fermi面によるKajita振動で変調されており、 再構成された擬1次元Fermi面の角度効果として理解されることがわかった。


 

低次元半導体ナノ構造の磁気光学的研究

「(411)A および(100) 基板上GaAs/AlGaAs 量子井戸からの磁気発光スペクトル」

   半導体中の励起子に磁場を加えると、磁場に垂直な面内で波動関数が収縮する。また量子井戸などの半導体ヘテロ構造の光学応答は、 電子系の低次元性を反映して励起子状態からの寄与が支配的となる。特に輻射・無輻射過程を持つ励起子再結合は界面ラフネスの影響を受けやすく、 その発光スペクトルにはボーア半径程度の空間におけるポテンシャル揺らぎの情報が含まれていると考えられる。 また、電子・正孔空間分離性が、振動子強度のみならず励起子拡散効果を通して発光スペクトルを特徴づける。 これらのことから、発光半値幅に注目すると、いわゆるタイプI 直接型励起子の場合、ヘテロ界面に垂直に磁場を加えると、 発光スペクトルの半値幅が増大することが予想される。一方、タイプII 型の励起子の場合、磁場による励起子寿命の増大に伴う励起子拡散の効果により、 半値幅が減少することが予想できる。
   高指数面基板にMBE 成長させたIII-V 族化合物半導体ヘテロ構造において、従来の(100) 基板では得られない超平坦ヘテロ界面が形成されることが明らかになっている。そこで、磁場中での励起子発光がヘテロ界面の状態にどのように依存するのかを調べるために、 (411)A および(100) 基板上にそれぞれMBE 成長させた井戸幅の異なるいくつかのGaAs/AlGaAs 量子井戸からの発光スペクトルを、 40 T を超えるパルス磁場中で測定した。(411)A および(100) 基板上にそれぞれMBE 成長させたGaAs/AlGaAs 量子井戸構造において、磁場による発光半値幅の増大が(411)A 基板試料よりも (100) 基板試料において顕著になっており、高指数面基板による超平坦ヘテロ界面の形成[2] を裏付けるとの報告をおこなった。そこで、今回我々は、より界面の急峻性が高いと思われる量子井戸構造を作製し、磁場分解能を上げるためにCCD の電荷移動機構を利用した 高精度の磁気発光スペクトル測定を行った。図は、(411)A 基板上に連続成長させた12 nm から4.8 nm までの井戸幅の異なる量子井戸において、 ヘテロ界面に垂直に磁場を加えたときの磁気発光スペクトルである。この試料では磁場による発光半値幅の増大現象は顕著ではなく、界面の平坦性を示している。(100) 基板試料では、 磁場による発光半値幅の増大が顕著になっており、 高指数面基板による超平坦ヘテロ界面の形成を裏付ける結果といえる。


「半導体ナノ構造における電子・正孔空間分離型励起子からの磁気発光ダイナミクス」

   磁場中での励起子発光では、磁場の二乗に比例する高エネルギーシフトと、振動子強度の増大に伴う発光強度の著しい増大現象が起きることはよく知られており、 半導体ナノ構造においては量子準位の次元性を研究する上で貴重な情報を与えてきた。 一方、いくつかのナノ構造試料において、これらの磁場効果とは異なる振る舞い(異常に小さな、あるいは低エネルギー側へのシフトや発光強度の減少傾向など) が観測されることが以前から知られていたが、その理由は明らかでなかった。 そして電子・正孔空間分離系であるGaP/AlP超格子からの磁気発光スペクトルにおいて、これらの異常と類似の、またより顕著な現象が見つかり、 統一的に解釈できる可能性が出てきた。この現象はその後、繰り返し周期を持たない隣接閉じ込め構造(Neighboring Confinement Structure)やGaAs/AlAs系、 II-VI族量子ドットなど多くのナノ構造半導体で見つかっている。タイプIIに限らず、前述の直接型半導体で作られたナノ構造においても、サイズ、 界面の状態によっては電子・正孔空間分離系となりうる。この空間分離性が極めて長い励起子寿命をもたらし、 発光スペクトルに単に磁場中でのエネルギー準位の変化だけではなく、ヘテロ界面上のキャリア拡散の履歴を残すこととなる。 そこで、磁気発光異常と空間分離性の関係をより詳細に調べるために井戸幅の異なるNCSを作製し、異なる励起光強度において、 磁気発光スペクトルの測定を行った。その結果、比較的井戸幅の大きなNCSについて、非常に大きな励起光強度依存性があることがわかった。 すなわち、弱励起状態ではこれまで見つかっているのと同様な発光異常が観測されたのに対して、より強励起の状態では発光強度は減少しながらも、 高エネルギーシフトする様子が観測された。これは、バンドフィリングの効果により、非局在状態からの発光が支配的になったためではないかと考えられる。


バナースペース

内田 和人

東京大学物性研究所
凝縮系物性研究部門

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